鳴り響く目覚まし時計を止める。
 普段は起きるのが苦手な俺だけど、流石に今日は気合いを入れて起きたぞ……。
 さて、荷物は前日に整えてあるし、お母さん起こすか。

「お母さん起きて」
「うむり」
 予想に反して母はすぐに起きてくれた。これなら余裕を持って家を出られそうだぜ。
「じゃ、駅まで送ってほしいんだけど途中で本屋よって」
「了解したなり」

 本屋につく。ここは24時間営業なので朝早くてもやってるのだ。
 とりあえず目についた本を買う。
 魂姫3巻、ラノベ部1巻、神様のお気に入り4巻。
 まぁこれぐらいあれば大丈夫でしょう。
 ついでにのりも買いました。

 さぁこれで準備はばっちりだ。行ってやろうじゃないか、センター試験会場に!

 駅に着いたところで受験票を確認する。
 駅で電車を待つ間はずっとラノベ部読んでた。
 んで、ぼちぼちと友達も集まってきたところで電車に乗る。
 電車の中ではみんな参考書開いてた。俺だけ漫画読んでた。
「ちっ、偏差値に溺れた愚か者どもがっ!」
「孔雀、なんでそんなんもってきたん?」
「センター試験って間の休み時間が長いだろ? 1時間近くあるじゃん。だから暇つぶし。あと周りにプレッシャーかけるために持ってきた。焦るだろ? 会場で漫画読んでるやついたら」
「むしろ安心するな。あいつは間違いなく俺より偏差値が低い! って感じがして」
 その友達同様、皆漫画を持ってくるなんて信じられないかのような目で俺を見てくる。
 だが俺は間違ってない。なぜなら……
「その漫画なんなん? 読み終わったら俺にも貸してくれ」
 漫画の理解者がいるからだ。久々に登場した例の彼、こいつはいつも元気いっぱいだぜ。
 これで頭がよくなかったらもっと彼と仲良くなれると思うんだが、彼は"できる子"なので俺とは相いれない存在だ。滅びればいいのに。

 おや? ふと何か違和感を感じて持ち物を調べてみる。
「さて皆よ、ここで凄まじい事に気付いた……」
「どうした孔雀」
「……鉛筆と時計忘れた」
「お前もうやる気ねぇだろ」
「すまん。漫画の事で頭がいっぱいだったんだよ。とりあえず鉛筆貸してくれ」
 ふぅ、危ないところだったぜ。

 そのままなんだかんだで途中から皆もだべり始めて何とか目的の駅に着く。
 ここでバスに乗って会場に向かうんだけど、毎年恒例のセンター混雑によって窮屈なバスでの移動を余儀なくされた。
 バスで試験会場である某大学に到着。
 そのまま待機室に歩いていく。
 待機室でもずっと漫画読んでた。同じ学校の知り合いとかがやって来て
「流石孔雀君だぜ、ジュルリ」
「俺は私立狙いだからセンターあんまり関係ないから遊び気分できたんだけど、まさか俺以上に遊び気分で来ている奴がいるとは……」
 みたいな事言ってた。いや、俺は国公立型だからセンターも大切なんだがな。
 そして一科目が始まる。最初は地理からだ。
 しかし想像してた教室となんか違うな。普通に小学生が使うような木製の机に普通のクラスだ……。もっとこう、ゼミって感じの教室でやるのかと思ってた。
 教室に入るともうみんな静かに座ってた。まだ15分ぐらい余裕があるのに、今すぐにでも始まりそうな雰囲気だぜ……。
 ちなみに例の彼も同じ教室だ。
 ガラガラとドアが開いて、恐らく50過ぎだろう老人が入ってきた。この人が監督者かな。
--スタスタッ
 しかしそのおじいちゃんは、そのまま教室を歩いていき、俺の斜め後ろの後ろに座った。
 じゅ、受験生だとうぅ!?
 くっ、冷静になれ俺……ペースを崩すために漫画読んでたのに、俺がペース崩されてどうするんだ!
 ふぅ……よし、あのお方、いや長老はただの冷やかし受験に違いない。気持ちを沈静化。
 遅れて二人組のおっさんが入ってきた。この人たちが本物の試験官か。
 「はい、では今から試験の説明を始めます~(超長い)~です」
 「あ、あと写真用シールを配るのでまだ持ってない人は手を上げてください」
 写真用シール!? まさか証明写真ってシールで貼るものなのか!?
 俺普通にのりで貼ってきたんだけど、どうしよう!
 「あの、すいません……」
 シーンとしたクラスで声をかける。
 「はい?」
 「あの、写真自分で貼ってきたんだけど」
 「いや、それが普通でしょ?w」
 いや、本当にwがついてたんだよ。嘲笑ってたんだよ。
 どうやらシールは上から貼るモノらしい。凄まじく恥ずかしい。

 それでしばらくしてテストは終わった。
 とりあえず俺の後ろに座ってる人がウザイ。何かあるたびに試験官に馬鹿丁寧な言葉で質問しやがる。うざすぎる。神経質すぎだ……。これだから、受験生は怖いとか何するかわからないとか言われるんだよ学歴社会の豚め。
 昼食をとるため待機室に戻る。漫画を読みながらパンをかじる。
「大問2でいきなり地域調査出てきてびびったな……」
 へっ、みんな前の時間のテストの話なんかしやがって。
 スイッチ切り替えろって感じだぜ。
「電源すら入ってない奴に言われたくないな……」
「いや、まぁそんなことより聞け。俺の受験してる教室変な奴多い」
 俺は友達に長老や後ろの奴の話をした。
「確かにお前の教室濃いな……。俺の教室なんて全員絶の修業してるとしか思えない静けさなんだぜ」
「だろ? そんな奴らと一緒に受験してるとこっちのペースが狂わされるよ」
「いや、濃いのはお前と例の彼も含めてだろ。その教室じゃなくてよかったわー」

 さて、次は国語の試験だ。担任の先生が
「落ち着けぇ、しょせん日本語や」
 なんていうすごく勇気の出る言葉で励ましてくれます。あなた古文の時間に古文は日本語とは違うからちゃんと勉強しろや、とか言ってませんでしたかね。
 まぁ励ましてくれるのは嬉しいので、ここは素直にエールを受けよう。
 教室に入る。とりあえず相変わらず後ろの奴がウザイ。試験官にこびり過ぎだろ。神経質すぎて浮いてるって言うのがわからんのか……
「あの、不躾な事をお聞きしてもよろしいでしょうか」
 って、本当にこういう喋り方をするんだよ……。
 まぁ気を取り直して気持ちを引き締める。
 国語は得意教科(理系だけどね)だからリラックスして受けることができた。
 やけに長くてひねくれてたけど、この程度の問題俺の前では幼児用の絵本に等しいな。

「160点は堅いな……いや、200点いったんじゃねぇか、これ」
「孔雀よ、自信と自惚れは違うんだぜ」
「さて、次は英語英語」
 英語は苦手教科だ。よくて125点、悪くて80点。過去最低点で30点を叩きだしている。
 最近は平均105点ぐらいだが……さて、どうなるか。
「あの、私(わたくし)のマーク少し薄いかもしれないのですけど大丈夫でしょうか」
 あー、後ろのやつうぜー。
 まぁ色々とあったが英語は何とか終わった。橋の問題難すぎ。

「よっしゃー、最後はリスニングだぜー」
「なぁ、孔雀」
テンションあがってきた所に例の彼がやってきた。ちっ、テンションが落ちてきたぜ。
「ん、何? あととっとと失せろ」
「あのさ、俺の後ろに座ってる長老様、喋りかけてみたくない?」
「お前、正気か?」
「漫画持ってきて読んでるやつよりはな……」
「とりあえず、触らぬ神に祟りなし。とだけ言っておこう」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。という言葉がある」
 とにかく最後の休み時間はそんな感じの会話で終わった。
 さて、今日一番の楽しみリスニング試験。新しいイヤホン欲しかったんだよなー。
「あの、少し質問してもよろしいでしょうか」
 またお前か、後ろの男! いいかげんうざい事を自覚しろ。
「途中で事故が起きて、試験に支障が出たらどうするのでしょうか」
「あ、それも今説明するから。大丈夫だからね」
 お前、むしろ自重しろ!

 てなこんなで特に事件も起きないままリスニング試験が終了し帰ることになる。
 帰りも凄まじく混んでた。何とか駅についた。8時の電車に乗る。
「なんかさ、明日って風邪ひいたらどうなるんやろ。俺やばいかも」
「ん? 孔雀気分悪いのか?」
「あぁ、何か頭がクラクラする」
「滅多に使わない頭使ったからな」
 ひでぇ。

 んで、何とか自分の町に戻ってこれた。
 家に着くころには既に9時過ぎだったので、今日は大人しく遊戯王オンラインを1時までして寝ることにした。



続きます!