さて、ではセンター試験その後の事について少しだけ話そうか。
すぐ翌日に学校で自己採点だったが、結果は死んでいた。やはり英語と数学Ⅰがひどすぎる。
数Ⅰは多分模試で一番ひどい点数の半分ぐらいの点数だった。
英語は平均よりだいぶ低い点数だった。せめてこいつが使いものになれば……。
それから国語だが、まぁ案の定いつも通りの点数だった。こいつは偏差値60以上は余裕で堅いな。
地理も、まぁよくはないが悪くもない点数だった。偏差値53ぐらいか。
それから物理だ。休み時間漬けが効いたのか今までで一番いい点数が出た。
うむ。やはり直前まであきらめない事が大切だ。
自己採点のせいか知らないけど、ものっそ頭がクラクラする。頭痛いよぉ。
というわけで今は自己採点が終わった後の昼休みだ。
「てなわけで散々だった。もう俺に行ける大学はないな。あははは」
教室で友人たちと談笑。いや、笑い事じゃないんだけどね!?
「おーい、孔雀ー」
「ん?」
教室の外から俺の事を舐め回すように見つめる視線を送ってきているあいつは……。
「どうした鈴村」
鈴村だ。こいつが誰かわからない奴は修学旅行編の登場人物紹介でも見てくれ。
「いや、象がいないか? あっちの教室にはいなかったんだが」
ここで少しクラスがどうなっているかについて補足。
俺=6組
象=5組
鈴=3組
で、余談なんだが6組と5組は理系塔という渡り廊下を渡らないといけない。下級生や文系の子達は理系塔が凄まじくアウェイなのであまり来ない。
「ん、こっちのクラスにもきてないぞ。どうせ図書室で勉強してるんじゃないのか」
「そうか」
「象に何か大事な用でもあるのか?」
「あぁ……こいつだ」
そこで俺は鈴村が何か紙袋を持っていることに気がついた。
こいつはやばい。俺の長年のアレで研ぎ澄まされた嗅覚が、これはアレだと言っている。
「お前、それ、まさか……」
「うむ……」
神妙に頷いて中から薄い本を数冊取り出す。
「ふむ……」
それ見て俺も頷き返す。傍から見たらただの変人どもだ。
「お前、まさかセンター試験の帰りにそれを?」
「気にするな」
「ふむ……」
象への……土産か。
「まぁお前はこの程度の土産だとむしろ失礼に値するだろ。」
まぁパッと見た感じ別にいらないな。それにしてもあいつも随分育ったな。昔は俺の脚の小指の爪の垢にも劣る存在だったのに。今では親指の付け根ぐらいの大きさになっている。
「そうだな、象を探しに行くなら俺も一緒に行こう」
というわけで俺も鈴村に同行して図書室に像を探しに行くことに。
「よう、見つけたぜ」
図書室に行くとすぐに象は見つかった。
「おや、鈴村……そしてなぜか孔雀さん。ちょっとちょっと鈴村、どういうことっすか」
「別に孔雀なら構わんだろ……」
「まぁそうだけど」
最近ちょっと周囲の俺に対する評価が気になる。
そして図書室に最奥の机に座って物品を品定めする。
ちなみにうちの図書室は机の前に、こう、バリケードみたいなのがあって仕切られているのだ。完全に1人用カウンター席。
「ふっ、やはり俺の趣味に合う本はないかな」
「こんなにもザックバランなジャンルを集めたのに、流石だな孔雀」
「しかし全部エロのほうか……えっと、なんていうか」
「まったくぶりっこみたいに振舞って。そういうのが好きなんだろ象~」
「鈴村の言う通りだぞ象。これはお前への土産なのだからな」
「お金はないし、今度にしてくれ」
「わかった」
なんだかんだいって土産を受け取る象。ちっ、カマトトが。
「そういえば俺も前に夏コミが終わった後に同人誌を紙袋に入れて大量に持ってきたことがあるんだが」
あれは思い出すだけでも背筋に冷や汗が流れる事件だった。
「あぁそういえばみんなに布教し回ってたね。俺も借りたけど」
「あぁ。それで数学の時間なんだが、机の横に置いておいた紙袋を先生が通りざまに蹴ってしまって中身をぶちまけた時は焦ったな」
「おまっ……」
「ほら、あれって表面やけにツルツルしてたり、スベスベしてるの多いじゃないか。だから綺麗にサーッて出ていって……」
「ゴゴゴゴゴゴ」
「いやぁ、周囲が協力してくれなかったらやばかったよ色々と。まぁそのかいあって回収作業も先生に気付かれなかったし」
「さてと、象」
俺のトークが一段落したところで鈴村が話を切り出す。
「放課後はもちろんカラオケだよな」
「えぇ!?」
「鈴村っ、お前!」
カラオケだと!?
「俺も行くぞ!」
ガシ、と腕と腕とぶつけ合う俺と鈴村。
「流石孔雀!」
「今日はセンター明けだから、絶対みんな遊ぶと思って、普段は300円までしか持ち歩かない俺が大目に(6000円位)持ってきたし、この天気(雨)の中あえて自転車できたし!」
「俺も俺も! やっぱり考えることは一緒なんだな!」
「いや、普通遊ぶなんて思わないでしょ……。二次が本番なんだからむしろ更に勉強するんじゃ……」
「はぁっ? 何お前? バカなの? 死ぬの?」
「孔雀、センター死んでたくせに……」
「俺も死んでるぜ」
流石同志鈴村。
「象よ、俺は勉強が嫌いなわけじゃない。勉強よりも優先すべき事があるだけだ」
「じゃ鈴村の最優先事項は何?」
「マ(以下倫理規制)」
「誰か変態さんがいるYO。鈴村死ねばいいYO」
「いや、象よ。鈴村もあながち間違ったことは言ってない。人間の三大性欲は……あ、間違えた。三大欲は睡眠欲、食欲、性欲だからな」
「今なんかおかしい事口走ってたぞ!?」
「まったく孔雀がいると俺ですら突っ込みに回らざるを得んな……」
「お前全然突っ込んでないよね?」
んで二人で頑張って説得したけど、結局象はこない事に。
「だってさっきも言ったけど金ないし。それに車できたし」
「5,6限の間に俺があと二人誘っておく。任せろ」
「任せたぞ孔雀」
てなわけでドタバタの昼休みは終わった。
5,6限は自習だ。先生たちは自己採点とかに漏れがないかチェックしてるらしい。
その間に同志を見つける必要がある。
「カラオケ行こうぜ」
「がってん、承知だ、了承」
簡単な任務だった。
すげーノリノリな奴……うーん、日記だと初登場だからノリスケにしとくか。
と、俺とノリスケに半ば無理やり連行されることになった教授を誘うことに成功した。
「行ってもいいけど勉強大丈夫かなぁ」
「教授センター何点だったの?」
「640点ぐらい」
「ちっ、死ねばいいのに」
んで、放課後。俺、鈴村、教授、ノリスケの4人でカラオケに行くことに。
自転車に乗ってきてるのは俺と鈴村だけなのでとりあえず鈴村が教授に自転車を譲り走ることに。
ノリスケは家が近いのですぐにとってくる。
雨の中なんとかカラオケボックスに到達する俺達一行。
「そういえばさー、俺センターの日の朝ここで本を買っていったんだけど」
俺は試験会場で漫画とラノベを読んでいたことを話す。
「お前バカだなー」
「で、家に帰って気がついたんだけど。センター会場にラノベ一冊忘れてきた」
「お前バカだな!?」
んでまぁカラオケを始めることに。
詳しく書くと長くなり過ぎるので割愛。とりあえずその場の空気的にアニソン縛りだった。
「あー、次の歌なんだ? HOLLY LONELY LIGHT?」
「あー、俺俺」
曲が始まる。そう、俺の大好きなこの曲が。
「あのさ、始まってから少しの間だけ耳塞いでた方がいいよ」
「なんで?」
「んー、まぁ別にいいけど」
~~♪~~♪
「ォアアァァァォオオオrァprォアラオアオアッ~~!!!!!!!!!!」
俺の甲高いシャウトが室内を満たす。
HOLLY LONELY LIGHTの最初のシャウトが大好きなんですよね。わかる人だけわかってほしいけど、わからない人はニコニコか何かで調べてみてください。
「びびった」
「俺も」
だよねー。
あと教授は歌が上手い。教授と一緒に行くのは3回目だけど、教授が歌うと普通の歌に聞こえる。
「電波ソングは普通の歌だけど?」
教授カッコイイヨ教授!
てなわけで2時間半歌って解散となりました。
歌ってる間ずっと頭がクラクラしてた。なんかセンター1日目ぐらいからずっと頭の調子悪いなぁ。
ずぶぬれになりながら家に到着。
試しに熱を計ってみると……。
「………………明日の学校は休みだな」
そして孔雀はこれから一週間以上にわたって病気と闘うことになるのだった。